整備日誌    2001年12月編

2001年12月1日
さて、12月です。ダウンヒルシーズンの終了です。シーズンオフの今のうちに洗車、点検、オーバーホールを行いましょう。考えてみればまるで自転車を壊しにいっているような使い方です、それなりの疲労やら不具合があったりします。せっかくですからきれいに洗車して各部をよーく、よ〜く点検しましょう。するとほら、こんな具合にヘッドが歪んでいたりフレームやスイングアームにクラックが入っていたりしませんか?
痛い思いをする前にしっかりチェックしましょう。

2001年12月22日
色々あって更新が遅れています(^^;
imageimageさて、今シーズンなかなか好調なうちに走り終えたKRD氏のマルゾッキモンスターTをバラすことになりました。せっかくだから撮影です。しかし撮影しながらの仕事ってのは非常に時間がかかります。が、ネタにはもってこいなのでパシャパシャと撮影します。
さて、今回は今まで使用していて特に問題がなかったことからオイルシール等の交換は行いませんでした。よって完璧バラシではありません。
まずはオイル。このフォークはオーナーの趣向により初めから純正よりもっと軽めのオイルを使用しておりました。1シーズン使用して右写真のような色のオイルが出てきました。マルゾッキZ-1系の作り故もっと汚いオイルが出てくるかと思っておりましたが、意外やまあまあの状態でした。もっともZ-1とは異なり、ちゃんとスライドメタルで摺動させているし、何でなんだろう?とバラした後に色々見ていたら精度が上がっているのですね、位置決めがしっかりしていました。よってオイルの汚れは少なかったものと思われます。
それにしてもこのフォークはいい動きしていました。KRD氏曰くほぼストローク使い切っているし、私が乗ってもガレ場で上手に吸収してくれていました。これで重量さえ何とかなればなーと思う今日この頃です。

2001年12月23日
ニューサイで言うところの”魔物系”の自転車をお持ちのHSO氏からTOEI社のフレーム再塗装を依頼されました。と言っても普段から丁寧に乗られているバイクですので、再塗装するまでもないと思われるコンディションのバイクなのですが....実際塗装屋さんの方でも「これ再塗装するんですか?」と尋ねられました。
再塗装、すなわちパーツの全外しを意味します。HSO氏のTOEI号はマニア垂涎のカンパニョーロ50周年記念モデルで組まれております。しかも今まで一度もバラしたことがなかったとのことです。氏によるとまだ”1万キロ程度しか”走っておられないとのこと。だって他にも魔物系お持ちですから。バラすこっちも興味津々です。
と言うのも、弟がオタクっぽく旧型カンパを愛用しており、しかしながら全くメンテをしないにもかかわらず、たまにバラしたりすると回転部はほとんど新品と言って良いくらいの状態だし、汚れたまんまのコンポーネントも拭ってやるだけでこれまた新品に近い輝きを取り戻すものですから、普段からピカピカ、しかし20年くらいはオーバーホールしていないカンパはとっても興味あります。
imageimageさて、まずはBBです。少々期待は裏切られました。たしかにバラす前からちょっとコリコリ感(ゴリゴリではない)はありました。さすがに汚れが目立ちます。まぁ、BBは組合わさるパイプの一番下にくる所なので、雨の中を走ったり、雨天未使用であっても夜露とかがパイプ内部に溜まると、その水滴がパイプ内をしたたり落ち結局BBに到達して悪影響を起こさせます。しかもバラしてわかったことですが、この当時のBBにはウオーターシースが二重になっているはずなのに1個しか入っていませんでした。それ故防水が完璧ではなくベアリングや玉当たり面に悪影響を及ぼしていたのかもしれません。残念と言えば残念なところでした。

2001年12月28日
こちらはクリーニング後こっちはクリーニング前次はヘッドパーツです。20年分?の垢が溜まっています(^^; と言うかその割にはずいぶんまともな状態です。と言うのもクリーニングするとご覧の右写真のように実にきれいになってしまいました。ワンにも、玉押しにも、ベアリング自体にも特に目立った傷等はなく、クリーニング前の状態から察するよりずっとコンディションの良い状態ではありました。

ハブ クリーニング前ハブシャフト クリーニング前そして次はハブです。
ばらす前に手で回してみるとちょっとコリコリ感がありました。けど動きは重くない。バラしてみるとグリスがちょっと固まっていますが悪くない状態です。というか非常に良い状態。この当時のカンパのグリスはピーナツバター色のグリスが使用されていましたが、その色のままの状態。ただこのグリスはだんだん固まってきてしまう傾向にあるようで、今回のクランケ君もやはりちょっと固まっていました。
ハブクリーニング後ハブシャフト クリーニング後それにしてもきれいな状態です。ベアリング自体に傷や打痕は見られず、ベアリングレースや玉押しにもまったく異常は認められません。とってもきれいな当たりすじが一本、均一にうっすらとついています。
それにしてもこの当時のカンパニョーロのベアリングは最高ですね。他にもバラしたことはありますが、いつもきれいな状態です。この頃から機能的にはシマノ DURA-ACE に追い越されつつあったと言えるでしょうが、回転部に関してはカンパニョーロの方が優れていると断定できるでしょうね。それだけにBBの状態がちょっと残念でした。しかし最近のカンパニョーロは10年後どうなんでしょうか?きれいな玉当たりを見せてくれるのかな?

グリスホールあり。だけどクローチェダウネなんです、これ。カンパニョーロ50周年記念モデルさて、ハブをバラしていて気になったのがグリスホール。50周年記念モデルは当時のスーパーレコードをベースにスペシャルとした物のはず。当時のスーパーレコードにはハブ本体の真ん中にグリスホールがあり、カバーをずらすとグリスを注入できるようになっていました(注:左写真はクローチェダウネ。スーパーレコードがなかったので)。で、チューッとグリスを注入すると上の写真に写っているハブの両端から古いグリスが出てくるという仕組みでした。が、50周年記念はスペシャルな刻印をするためか?このグリスホールがありません。しかしハブ両端には古いグリスの出てくる穴があります。と言うことは、片側の穴からグリスを入れて反対側へ抜くということでしょうか?どなたか50周年記念の謎をご存じの方はいらっしゃいませんか?
一見、見てくれに凝った変更のようですが私はこれを気にしません。と言うのもグリスホールはグリスアップするには便利ではありますが、ハブの中身をグリスで満たすわけで、これじゃ抵抗になってしまいます。しかも使用していると徐々にハブ両端の穴からグリスがニューッと出てきて汚れ付着の原因になるだけではなく(弟のカンパはいつも汚い)、そのままだと最悪ブレーキシュー摺動面に飛び散るおそれもあるわけです。
と言うわけで、私的には中級グレードあたりにこそグリスホール(やグリスニップル)を設けるべきで、上級機種は重量や抵抗の低減のためにグリスホールは必要なしと考えます。
上級機種はちゃんとバラしてメンテする物と考えるわけであります。
しかし、たったこれだけの作業ですが今回もまた楽しませていただきました。以前やったリッチーペダルの時もそうでしたが、思想のあるパーツっていうのはそれを解き明かしていくととても面白く、そしてうなずけるものがあります。やっぱ真似っこはイカンです。

整備日誌へ戻る