整備日誌    2004年12月編

12月15日
そういうわけでメンテやらなきゃヤバイと思った方もいらっしゃるでしょう。と言うわけでHRD氏よりマニトウミニット1のオーバーホールを依頼されました。ミニットと言えばSPVバルブ、と言うわけで大変興味あります。
そういうわけでバラし始めます。


まずはオイル。見ての通りのきれいなオイルが出てきました。
ま、最近のフォークはスプリング側とダンパー側が左右に分かれているのがほとんどで、それ故スプリングがインナーチューブ内面に摺れたカスなどがダンパーに混入ということがないので、きれいなのは当たり前と言えば当たり前かも。
しかしそうは言ってもSPVのダンパーオイルは毎年代えろとマニュアルには書かれておりますし、セミバス用オイルは少なくとも4ヶ月に1度は代えろと書かれております。
排出されたオイルがきれいだったからと言ってまったく劣化していないわけではありません。


とりあえず全バラしした図。一見何も問題ないように見えます。



この黒いバルブがSPVバルブアッシー。青いバルブがキモです。
もっとアップで見てみましょう。


青いバルブは二重構造になっており、中には銀色のバルブが入っております。こんなイメージですね。
で、この青い側がコンプレッション側のダンピング制御を司ります。通常時は左図のように二重バルブが閉じた状態になっています。青いバルブは黒バルブとほぼ同じ径で、通常時は青バルブが黒バルブを閉じている(厳密に言うと若干の隙間はありますが)ので隙間は少なくコンプレッションダンピングは高くなります。
なお、青いO−リングより左側がコンプレッションダンピングを司り、右側がリバウンドダンピングを司るバルブ(銀色のシム)になります。

しかしサスペンションの動きが速くなると青バルブは左図のようにずれ、黒バルブとの隙間が増え減衰力が下がりスムースにストロークします。
なおシャフト上にある窓がリバウンドの際のオイル通路になり、リバウンドダンピング調整ダイアルを回すと、窓の開口面積が変わることでダンピング調整を行えます。
ところでSPVはエアプレッシャーとエアボリュームを調整でき、これでコンプレッションダンピングの調整を行えます。これはどのようなことをしているかというと、上の方にある分解写真を見ると、インナーチューブの上に黒赤のキャップがあります。これがいわゆるトップキャップ。トップキャップはインナーチューブのてっぺんに取り付けられるわけですが、キャップが二重構造になっていて内側に赤いやつがねじ込まれています。そしてこれにはエアバルブがありエアを調整できるようになっています。またねじ込み構造になっているのでねじ込んでいけばエア室の体積は減りプログレッシブ特性を変更させることができます。まあ言ってしまえばたったそれだけのことなんですけどね。


と言うわけでSPVですが、まあざっとこんな感じ。現物を手にしながら、色々な資料を参考にしながら、そして頭の中で作動状態を想像しながらまとめてみました。
マニュアルを見てもアンサーのサイトを見ても詳しくは書かれていないから自分なりに理解するのにちょっと手間取りました。もっと詳しく書こうかとも思ったのですが、これ以上くどくなっても・・・・(^^;
しかしこのままでは終わらない。マニトウは、これまた面白いことをやってくれていたのです。
ってのは次回にまわしましょう。


12月18日
右足の次は左足、そう、こんどはスプリング側です。ミニット1はコイルスプリングを用いたサスペンション。エアサスとは異なりレートを一定にしやすく、それ故セッティングもやりやすくなっております。特にこれだけのストローク量になってくるとエアサスだとプログレッシブレートになりやすくセッティングがシビアになってしまいます。ので、私はこれくらいのストローク量になってくるとコイルスプリング支持派です。が、最近のエアサスはかなり改良されてきていますが。


さて、それでは解説です。
このサスペンションはRTWD(Rpid Travel Wind Down)、直訳すると迅速行程巻き上げ装置とでも言えばいいのでしょうか(^^;、サスペンションてっぺんのつまみを回すことでストローク量を100〜130ミリに調節することができます。
右図はストロークを最大の130ミリにした状態。

こちらはストローク量を最小にした状態。100ミリ状態です。
左側がインナーチューブのてっぺんで、右側がアウターチューブの下側になります。
RTWDのつまみを回すと、銀のシャフト上に付いている黒い樹脂が右側に移動します。と言うことは、アウターが引っ張られることになりストロークは減少します。スプリングを支えている下側のお皿の位置を変えることでストローク量が変わると言うことですね。
ふと思えばこれって初期型サイロと同じような調整方法です。ただ当時のサイロはストローク量を調整するにはトップキャップを外して、グリスまみれになったスプリングを外して、超長いマイナスドライバーでお皿の位置を変える必要がありました。それが手元でコントロールできるという、初期型サイロをお持ちの方からすると大変羨ましい構造になっております。
ところがこの構造には致命的?な欠点がありまして・・・・
と言うのはストロークが減ってハンドル高さが変わるだけでその他には何も変わらないと言うことでした。
もっとわかりやすくいうと例えば120ミリ状態でちょうどよいセッティングが出たとします。ここで言うちょうどよいというのはちゃんときれいに120ミリ使い切れるという意味です。この状態で100ミリストロークにしたとします。と、ストローク量が変わるだけなので(バネの硬さは変わらないので)すぐにフルボトムしてしまうわけです。今まできれいに120ミリ使えていたということは、100ミリ以上120ミリ以下の領域で使用されることがあったということで、単に100ミリになってしまうと言うことはその状態の時には既にボトムしてしまうということです。
ショートストロークにしたときには今までと同じ力が入力されたときにフルボトムするような硬さにならないと困るわけです。120ミリでフルボトムするような力がかかっていたわけですから、100ミリストロークに変更したのなら、同じ力を100ミリで受け止められるように硬くならないとならないわけです。
もっと言えば、ショートストロークにしたいと言うことは飛んで跳ねて・・・・という乗り方をするのではなく、ストイックに登りでコギを入れてとか、街乗りなどで無闇にふわふわと動いて欲しくないということでもあります。ということは考えようによってはもっと硬くなってもよいわけです、ふわふわ動いて欲しくないわけだから。で、マニトウはどう対処したかと言うと・・・・
次回に続く。←ヒッパルナァ


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