整備日誌    2013年6月編

6月5日

ネタはあるけど時間は無い(言い訳)。
でも興味あることは時間を割いてでも調べてみたい。
そして忘れないうちに書き留めておきたい。
ので、時間は無いけど忘れないうちに書いておきます。

今回はロックショックス TOTEM。
強引に解釈するとBOXXERのシングルクラウンバージョンと考えてもよいフォークでしょう。
KMGI氏からの依頼はオイル交換のみでしたが、ちょっと気になるところもありスプリング側もバラし、ダンパーも色々検証してみました
このフォークはスプリングはソロエア、ダンパーはRC2DHです。


まずエアスプリング側。
青いバルブがエアピストン。
このエアピストンの上側(左側)がポジティブエア室になります。
そして左手親指で押さえている側がネガティブエア室側になります。
見えづらいですが先端に銀色のニードルが見えますでしょうか。
写真1
この物体が左インナーチューブの中に入っています。
人差し指より左側がポジティブエア室側で、人差し指と親指の間がネガティブエア室になります。
青い出っ張りの先にある銀色のニードルの出しろに注目して下さい(見えづらくてゴメンナサイ)。
この状態はサスペンションが伸びきってはいない状態です。
写真2
親指と人差し指をぎゅっとつまんでみました。
この状態はポジティブエアによりエアピストンが押されている状態です。
すなわち普通に伸びきった状態。
シルバーのニードルを写真2と比べてみて下さい。
ニードルの出っ張り量が増えているのがわかります(見えづらいですが…)。
ポジティブエアによってピストンが押されニードルが開き、ポジティブエア室とネガティブエア室の空気圧はイコールに保たれます。
これ重要ポイント。

すなわちポジのエアがネガを越えることでサスペンションは伸びきるということです。
何を言いたいかというと、エアを足していくときはいいんです。でも抜くときにはちょっと注意が必要と言うことです。
例えばエア充填後走行しエアが高かったとします。するとエアを抜きますよね。
エアを抜くとポジのエアがネガ未満になるので、フォークは縮められようとします。
縮むと言うことはポジ室とネガ室は通じていないことになるので減圧しても抜けるのはポジだけということです。
ですので減圧した際には足でタイヤを押さえるなりして伸びきらせてやらないと両室の空気圧はイコールになりません。
セッティングの際にちゃんとしたデータが取れなくなりますね。
というわけで減圧した際にはフォークを伸びきらせましょう。

今回はTOTEMのソロエアですが基本的にソロエアは同じような仕組みになっていますので、ソロエアサスペンションのオーナーさんは上記を覚えていて下さい。
 
写真3

次回はダンパー側を検証します。


6月27日

また日にちがあいてしまいました。
ソロエア、もう一点気づいたことがあるのですがそれはそのうちに。
今回はダンパーの検証。
TOTEMのダンパーはRC2DHというダンパー。
DH向け?にモディファイされた?ハイ、ロースピード独立調整式コンプレッションダンパーと調整式ビギニングリバウンドダンパーを装備しております。
その仕組みがどうなっているかは以前から興味あるところでした。

インナーチューブからダンパーを外すとこのようになっています。
左からコンプレッションダンパー、ダンパーチューブ、リバウンドダンパーです。
写真の都合上パーツを分けて撮影していますが、実際にはダンパーチューブの中にリバウンドダンパーが入っており、そしてダンパーチューブの上にコンプレッションダンパーが乗っかっています。
ですので写真左側が乗車時の上側になります。 
写真 4
コンプレッションダンパーを下から覗くと上写真のようになっています。
ここで真ん中の穴の奥に先端が丸い物が見えますでしょうか。
そしてその先(というか手前)に長楕円の溝が見えますでしょうか?
手前の3つの溝ではありませんよ、穴の中にある小さな溝です。
そのまま下の写真 6を参照して下さい。
写真 5
写真 5と同じように見えますが先端の丸い物が長楕円の溝に近づき、手前に来ているのがわかるでしょうか?
写真 5はロースピードコンプレッションを最弱にした状態、そしてこの写真 6は最強にした状態です。
衝撃を受けてサスペンションが縮むとオイルはコンプレッションダンパー側に逃げようとします。
そのダンパーの真ん中に長楕円の逃げ道があるわけです。
ロースピードコンプレッションを最弱にしているとロッドが上に逃げるので、穴をほとんど塞がずにスムースにオイルが流れます。ので、減衰力が下がる。
逆に最強にしているとロッドが穴を塞ごうとするので、オイルの通る面積が少なくなるので減衰力が上がります。
ただ動きがあまり速くないときにはこれでいいのですが、ジャンプからの着地など速い動きの時には流量を処理しきれなくなって急激に減衰力が上がってしまいます。
流量はオイルの流れ速度に比例しますから。
これでは「手にくる」ようになってしまいうまくありません。
そこで…
写真 6
ハイスピードコンプレッションの登場です。
まずはハイスピードコンプレッションがどのように制御しているのかを検証していきましょう。
写真 7はコンプレッションダンパーのアップです。
青いダイアルがハイスピードコンプレッションのダイアルです。
これを回すと…
写真 7
写真 7との違いがわかりますかねぇ?
写真 7はハイスピードコンプレッションのアジャスターを最弱にした状態。そしてこの写真 8は最強にした状態です。
非常にわかりづらいかと思いますが、真ん中にあるスプリングがこの写真 8では押されて縮んでいます。
スプリングが縮んでその右にある黒い筒を押さえつけています。
そう、青のアジャスターを回すとスプリングのプリロードを変えているのです。
写真 8
で、そのスプリングの先、黒い筒の先はどうなっているかというと、黒い筒は銀色のシムを金色のバルブに押さえつけています。
と言っても見えづらいので裏から見たのが写真 5になります。というのを下にもう一度載せました
金色のバルブの奥に銀色のシムが見えます。
スプリングと黒い筒によってシムは金色バルブに押さえつけられオイルの流量を規制し減衰力を発揮しています。

サスペンションが速い速度で縮むとオイルが金バルブの3つの長穴から上部へ逃げようとするのを銀色のシムで抑えています。
その押さえる力をスプリングで調整しているわけです。
写真 9



以上のようにロースピード、ハイスピードを別々に制御しているわけですね。
よくよく見れば、ロースピードコントロールはリアユニットのリバウンドダンパーの調整機構と近いものがあります。
ただ多くのユニットが穴の中をとんがったシャフトが出入りすることで通路面積を変え減衰力を調整しているのですが、TOTEMのリバウンドダンパーはもっと上品な(というか知的?な)丸まったシャフトが微妙に通路面積を変え減衰力調整をしています。
最弱から最強までの調整代は尖ったシャフトが出入りする方が広いですが(そのかわりにアバウト)、TOTEMでは調整範囲は狭いかわりに微調整はしやすいですし、なにより使いもしない程の弱いダンピングや強いダンピングにはならないので、より現実的な範囲での調整が行えます。
全体的な構造も高級になっていますし、動きもより上質なモノになっています。
価格なりきのモノにはなっていますね。


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